大阪市会議員海外視察団は、シンガポール共和国における教育、観光、港湾、経済施策等の都市行政調査のため平成26年1月26日(日曜日)~29日(水曜日)の4日間、シンガポール共和国を訪問しました。
日程 |
時間 |
行程等 |
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1月26日(日曜日) |
11時00分 |
関西国際空港発 |
1月27日(月曜日) |
午前 |
マリーナベイ・サンズ視察 |
1月28日(火曜日) |
午前 |
シンガポール教育省説明聴取 |
1月29日(水曜日) |
午前 |
シンガポール港視察 |
シンガポール 大阪市会議員海外視察団 報告
1月26日~29日
報告者 公明党 辻義隆
今回は、先進的な取り組みでアジアの要衝の地として、成長著しいシンガポールの視察を行わせていただきました。大阪も関西新空港という24時間の国際空港を抱えながら、そのメリットを十分生かし切れているとはいえず、国際的な情勢をしっかりと見つめながら、次の世代に引き継げる大阪市のあり方を精査するために今回のシンガポールを訪れたことは、有意義であったと思います。以下、視察内容についてご報告いたします。
1月27日
マリーナベイ・サンズ視察・説明聴取
シンガポールの統合型リゾート(IR)の象徴的な存在であるマリーナベイに位置するホテル。屋上にプールを備え、その偉容は、世界的にも奇抜な建設として注目され、誰もが訪れたいと思うに値する魅力をもっています。
現地のエントランスからエレベーターを上がり会議室で、サンズ社の会社概要やシンガポールで進めてきたIRの取り組み。とりわけ、ギャンブル依存症対策や雇用の問題などに、総合的な観点からシンガポール政府と緊密な連携を図りながら、当初不安に思っていた国民に十分な説明を行い、その対策についても資金を投入しているとの説明がありました。
とりわけ不安視される、カジノについては、入場税制度を採り入れ、シンガポール市民および永住者からは入場税を徴取することで、ゲーミングの中毒性をガードし、責任あるゲーミングを推奨していること。入場税については、一日24時間のパス100Sドル、または、年間パス2000Sドルの2種類を設定。外国人については、入場税を免除するなど、あくまでも外貨獲得のためという位置づけを明確にしていました。また、家族からの通報や破産者については、ブラックリストに載せ、入場を拒否できるとのことでした。
これにより、シンガポールにおけるギャンブル参加率は、2008年の54%から2011年の47%と7%も減少しています。ギャンブルに関連する犯罪率についても2012年は4%と過去29年で最低となっており、IRにおけるカジノの果たす役割は、むしろ巷間抱かれているイメージとは真逆であるとの認識を新たにしました。
経済効果については、投資額が56億米ドル、ラスベガス・サンズが通常なら政府が負担する一部の施設への投資を肩代わりし、さらに、マリーナベイ・サンズが納めた税は、7億米ドル(2012年)となっています。2015年には、GDPの1.26%もの貢献を見込んでいるといいます。
雇用創出に関しては、シンガポール国内で3万7000人(2015年)を見込むなど、IRの効果がかなり大きなものになることがわかりました。
同社は、日本におけるIRについても積極的に進出したいとの意向を示し、特に、東京と大阪を比べた場合、大阪の立地優位性を強調。周囲に京都、神戸、奈良、和歌山と名だたる観光地が集積していることや土地価格の安さなど、様々な観点から大阪への進出を望んでいることが明確になったのです。
投資については、約5000億円の用意があり、雇用規模もシンガポールの実績である3万7000人が見込まれるとのことでした。さらに、工事着手からわずか3年で開業が可能なこと、行政側の支出としては、インフラ整備のみで十分という意欲的なアプローチもありました。
国会でもカジノ法案が上程され、観光集客に大きく産業構造が転換するなか、関西、とりわけ大阪の意気込み、取り組みが今後の課題ともいえ、積極的に投資意欲を示す、IR各社による提案競技などを踏まえ、海外からの観光客の増加を図る戦略ツールとして、IRの位置づけを明確にし、ギャンブル依存症など市民の不安にも明確に答えていくことが大切であると実感しました。
財団法人 自治体国際化協会シンガポール事務所(クレア)
この施設は、地方自治体の関係者がアセアン10か国およびインドでイベント、調査、視察などの活動を行う場合に、訪問先の紹介や政府機関等へのアポイントを取り付け、同行、行政制度などの概要説明、資料提供などの活動を行う機関で、今回の視察についても、さまざまなご協力をいただきました。
支援件数は、2003年の17件から、2012年には113件と激増しており、新興する東南アジアの成長力を日本の自治体としても取り込まなければいけない状況になっていることが垣間見られます。
特に注目されるのは、国際旅行フェアにおける観光PR事業で、これまで、中国、韓国が大多数を占めていた日本への海外からの観光客において、タイやインドネシア、ベトナムといった新興国からの旅行者が増えていることから、クレアの観光誘致支援事業の活用が期待されます。
フィリピン、シンガポール、タイ、マレーシア、インドネシアなどでフェアの実績があり、観光客誘致に関して、大阪をもっとアピールする必要性を感じました。
海外からの旅行者が日本での買い物、特にドラッグストアやホームセンターに興味を示すことを考えますと、日本製品の信頼性は確固たるものであるという自信を持つべきでしょう。そういう意味で、クレアが新規事業として計画している海外販路開拓支援事業は、注目に値すると思われます。堅調な経済成長を続け、日本食の人気も高く、地方自治体としての販路拡大を進める意欲を持ちクレアと連携して、東南アジアを舞台に日本製品の拡販のチャンスをコーディネイトするなど、大阪の中小企業を支える活用方法を考えるべきでしょう。
シンガポール情報通信開発庁 情報通信体験センター
情報通信は、発展する都市のインフラとしては、最低条件となっている現在、シンガポールでは、1999年にICT戦略を推進し、ICT立国を図るという目的を達成するための機関として、設立されたもので、そのモデルルーム的な役割を担うのがこの体験センターです。様々な機器や先進的なセンサー類などを展示しており、日進月歩のICT関連技術の最新動向を専門的な知識を持つエンジニアが紹介、説明してくださいました。すでに、シンガポールは、ブロードバンドが一般家庭にも浸透しているとのことで、学校や職場、家庭において、ICT技術がどう活用されるかを実体験することが可能になっていました。
日本でもブロードバンド化は、かなりの割合で高まっていますが、Wi-Fi環境が依然として不満が残る状態であり、早急に対応しなければならず、とりわけ大阪は遅れに遅れていることから、ビジネスの基盤設備としての、通信環境の改善が望まれます。
それを推進するためにも行政がICTを活用し、市民サービスの向上を目指し、民間を主導する気概が必要だと痛感しました。
1月28日
シンガポールのICT教育の現状について
シンガポール教育省では、1980年代というずいぶん早くからICT戦略を立案し、目標設定を明確にしながら、着実に成果を上げてきました。いわゆる日本が進めているフューチャースクールの原型は、シンガポールが発祥といっても過言ではないようです。日本では、一時期の流行で、電子黒板を導入しましたものの、活用されず、学年に一台、ほこりをかぶったままの状態が続いています。これを解消し、新たなiPadなどの端末を使いこなしながら、学習効果を上げる取り組みを大阪市も進めており、先進事例を学ぶ場としてシンガポールの取り組みは、有意義であったと思います。
ナンヤン女子中高一貫校
生徒一人ひとりにモバイル端末を配り、電子教科書として活用するほか、ICTの本来の機能であるコミュニケーションツールとしての活用にも取り組まれていました。ICT導入の効果としては、板書時間が学習指導に当てられるという時間的余裕が生まれたこと、教科主導からフィードバックを即時に行えるなど、学習効果が目に見えた形として表れていることなどが挙げられていました。
キャンベラ小学校
ナンヤン女子中高一貫校がどちらかというとエリート校のイメージであったことから、一般的な学校でのICTの取り組みということで、この小学校が選ばれました。地域住民は、公営団地に住み、共働きが多いということで、ICT機器の購入についても、ハードルが高いとのこと。そこをどうクリアし、生徒や保護者に認識してもらうのかということについても、教育的観点から取り組むという姿勢に感心しました。
ICT機器は、高価であり、おもちゃのように粗雑に扱ってはいけないという考えを子供たちにどう根付かせるかが課題として認識されていました。
まず、1月の段階でICT端末購入の理解を求めるための保護者会、2月は、1対1のワークショップを行い、3月は、教師のトレーニング、4月は、保護者フォーラム、5~7月には、端末を貸出し、子供たちにデバイス(iPad mini)の使い方を教えるというフローになっていました。端末については、アップル社と連携し、48Sドルという比較的安価な価格で購入していただきますが、ただ、家庭の経済的事情がある場合は、レンタルも可能なシステムとなっているとのことでした。
また、大切な機器を親に買ってもらい、大事に使いますという宣言文を読み、iPadを抱えて、保護者と記念写真を撮るなど、心の教育にも力を入れていました。校長先生が国の教育プログラムにも深くかかわっていただけに、かなりの思い入れがあり、一般的な小学校ながら、しっかり実績を積んでいこうという意欲がひしひしと伝わってきました。
リゾート・ワールド・セントーサ
シンガポールに進出しているIRのもう一つの雄がこのゲッティーズグループが運営するセントーサ島に位置するIR。中国系の企業体で、都市型のサンズに比べて、市街地から離れた場所に、ユニバーサルスタジオやリゾートホテル、水族館、コテージ、ショッピングセンターなどを備えたリゾート主体の施設構成となっていました。
同社は、時価総額1兆5183億円、ニューヨークやラスベガスにも進出しており、無借金経営を誇っています。日本企業とも提携関係にあり、Panasonicの備品を購入するなど、日本進出にも大いに期待をかけており、大手企業とのレバレッジ効果も予測されます。
日本進出にあたっては、関西に魅力を感じており、歴史、文化のあふれる地域であること、また、大阪の周辺には、京都、神戸、奈良など、個性的な観光資源が豊富な都市が集積していることから、ぜひ進出したいとの意向を示されていました。投資額も5000億円規模でサンズと同様3万人規模の雇用を確保するとしており、基本的に8割の雇用については、現地スタッフをローカルでトレーニングする方針とのことでした。島ということを考えますと、大阪では夢洲が候補に挙がっており、ユニバーサル・スタジオがあることを考慮しますと、立地の可能性に期待を抱かせるものでした。
1月29日
シンガポール港
大阪では、中枢港湾政策が神戸港と大阪港を一体化して、阪神港として整備を進めており、国際港湾としての進展を目指していることから、アジアの主要拠点であり、上海に次ぐ規模を誇るシンガポール港の視察に訪れました。
大型船舶が停泊可能な大水深バースをはじめ、大規模なコンテナクレーンが軒を連ね、さらに新たなクレーンの集積が予定されているとのことでした。圧倒的な数の差を見せつけられるとともに、次の段階では、次世代仕様として、待ち時間を最大限短縮するためにすべてを全自動化コンピュータ制御する考えで、計画を進めているとお聞きしました。すでに、システムについては外販もしており、横浜港で実用化されているとのことでした。この実情を見るに、大阪の港湾政策については、もう一皮も二皮も剥ける必要があると実感いたしました。
初めての海外視察では、ありましたが、追いつき追い越せの国際競争の中にあって、日本が少子高齢化という大きな課題を抱えながらも次世代に引き継いでいく、次のステージをきちんと整える責任が私たちにある限り、成長する各国の都市の実状をしっかりと見極め、大阪の成長につなげることは有意義なことではないかという思いを実感いたしました。
今回の視察内容について、今後の市政運営に活かすとともに、今後も海外の先進的な都市の事例を大阪市の都市経営に取り入れる施策を推進してまいりたいと思います。
平成25年8月28日~29日
北海道視察
①千歳市 観光政策
②千歳市 工業技術センター
③函館市 朝市
④函館市 老朽家屋対策
観光政策は、必死でなんとか地場産業を高めていこうという意欲が千歳市には、あふれていた。事業者と月一回の協議会を開き、イベントや広報活動を検討。ホームページもいち早くスマホ対応にしたり、札幌と連携し千歳につなぐ工夫もしている。大阪では、コンベンション協会および大阪観光局が情報発信をしているが、残念ながら、スマホ対応にはなっていない。
同じことが技術センターにもいえることで、単なる機器レンタル事業ではなく、ガゴメ昆布のように200種類以上の商品開発の手助けをし、融資のサポートにも積極的に動いている。
朝市は、民間事業とはいえ、市のサポートはかかせない。補助金はわずかだが、駐車場利用の援助など一丸となって落ち込む函館の観光需要を支えようとしていた。海外観光客の構図も少し変わり、中韓から、台湾とタイにシフトしているとのことだった。
老朽化家屋の対策は、時限付きで公的補助により除却を行うものだが、国の方でも補助対象を広げる動きがあり、大阪市としても、密集地域に限って、補助スキームをつくる必要性を感じた。
厄介者だったガゴメ昆布が真昆布の値段を追い抜くぐらいの人気に。フコイダンを多量に含み、体にいいそうです。
商品開発を進める「ねばねば本舗」より
平成24年8月22日~24日
広島県視察
①呉市 バス事業の民営化の取り組みについて
②広島県 水道事業における公民共同企業体の設立と指定管理者制度の導入について
⓷広島市 路面電車のLRT化の取り組みについて
⓸アストラムラインの経営状況について
⓹交通科学館の概要について
トップに来ている、バス事業の民営化は、大阪市にとっても喫緊の課題で、呉市の場合は、広電にバス事業を移譲する形で、不採算路線については、補助を打つということで、依然視察に行った札幌の手法と同じで、この四月からスタートしていまいました。廃止路線の手当ても、地元に協議会ができて、補助金を充てることで、ジャンボタクシーなどを活用した足の確保もしているとのことで、非常にきめ細やかな対応で、大阪市もああであってほしいなぁという実感。
水道事業の公民共同企業体は、面白いアイデア。大阪市でも実現可能な話で、機動力のある民間活用が可能になると感じました。地域事情はずいぶん違うので、大阪バージョンをしっかり考えたいと思います。
路面電車は、広島の交通を支える重要なシステムで、バスとともに、市民の足になっていますが、定時制を確保するためにLRTを採用したということで、信号待ちをなくしてスムーズに進むことができる仕組みや低床車両を国内メーカーが三年の歳月をかけて開発した話など印象に残りました。できれば、大阪市でも新路線が考えられるなら、取り組んでみたいなと思います。
アストラムラインは、大阪でいうところのニュートラム。実際に、ニュートラムに携わった大阪市の職員がアストラムラインにも、結構、貢献したようで、広島市の担当の方からまずお礼がありました。
交通科学館は、ちょっと外れの山間にありましたが、入場者数は比較的安定しており、今日は、平日にもかかわらず駐車場が満杯。なぜかというと、企画展のランボルギーニ・カウンタック展が人気があるとのことでした。私は、車にはあまり詳しくないけれど、その名は、知ってますからね。なかなかかっこいい展示でした。マニア垂涎のミニカーや車輛のモデルもたくさん展示されており、ミュージアムショップも充実しておりました。
今週は宮城県に出張しますので、ご報告いたします。
平成22年7月28日~29日
宮城県では、塩竃卸売り市場とこども病院、それから、宮城県立美術館の視察を行う予定です。いずれも、大阪市の大きな課題となっている分野ばかりで、非常に楽しみ。